フィリップス・コレクションは、アメリカのワシントンD.C.にある美術館で、1921年に開館しました。この美術館は、アメリカ初の近代美術館として知られています。
創設者のダンカン・フィリップスは、鉄鋼会社の創業者であるジェームズ・ラフリンを祖父に持ち、兄のジムと共に美術評論を行い、また一族のコレクションを管理していました。1917年に父親を、1918年に兄を相次いで亡くした後、ダンカン・フィリップスは母親エリザと共にフィリップス・メモリアル・アート・ギャラリーを設立し、1921年より一般公開となりました。
この美術館は、ルノワールの『舟遊びの昼食』、フィンセント・ファン・ゴッホの『アルルの公園の入口』、ポール・セザンヌの『ザクロと洋梨のあるショウガ壺』など、ヨーロッパ絵画だけでなく、ジョン・マリンやエドワード・ホッパー、スチュアート・デイヴィス、モーリス・プレンダーガスト、ジョージア・オキーフ、ジョン・スローン、グランマ・モーゼス、サム・フランシスなどの20世紀アメリカ絵画のコレクションでも知られています。
作品名 | 舟遊びをする人々の昼食 |
作者 | ピエール=オーギュスト・ルノワール |
制作年代 | 1876年 |
寸法 | 129.9 cm × 172.7 cm |
ルノワールの《舟遊びをする人々の昼食》は、1880-1881年に描かれ、1882年の第7回印象派展に出品されました。この作品は、フランスのシャトゥーにあるセーヌ川沿いのメゾン・フルネーズというレストランで昼食をとる人々を描いています。
この絵画は、人物、静物、風景が一つの作品の中に組み合わされており、ルノワールの友人たちがレストランのテラスでくつろいでいる様子を生き生きと描いています。テーブルの上には果物とワインが並んでおり、手すりの斜線が画面を二つに区切っています。
登場人物は以下の通りです。
この絵画は、人々が自然の中でリラックスし、楽しんでいる様子を描いており、視覚的な豊かさと感情的な満足感を伝えています。ルノワールは、色彩と光を用いて、人々が共有する瞬間とその場所の美しさを捉えました。
また、この作品はルノワールが「生きる歓び」を表現すべく模索した結果生まれたものであり、その点も重要な表現要素となっています。つまり、この絵画はただの風景や人々を描いたものではなく、人間の感情や経験を通じて「生きる歓び」を視覚化した作品と言えます。
作品名 | アルルの公園の入口 |
作者 | フィンセント・ファン・ゴッホ |
制作年代 | 1888年 |
寸法 | 72.5 cm × 91 cm |
フィンセント・ファン・ゴッホの『アルルの公園の入口』は、1888年に描かれた作品で、彼が南仏アルルで過ごした時期の作品の一つです。この絵画は、公園の門を通じて見える風景を描いています。
ファン・ゴッホはこの時期、色彩を大胆に用い、独自の表現を追求していました。『アルルの公園の入口』でも、彼の特徴的な筆使いと色彩が見られます。画面全体に広がる青と緑の色彩は、南仏の自然を生き生きと表現しています。
また、公園の門や木々、道などは、線で描かれていますが、これらの線はただ物を描くためだけでなく、絵画全体のリズムや動きを生み出す要素ともなっています。これらの線や色彩によって、視覚的な印象だけでなく、風や光、空気感までもが表現されています。
作品名 | エレーナ・パヴロウスキーの肖像 |
作者 | アメデオ・モディリアーニ |
制作年代 | 1917年 |
寸法 | 64.8 cm × 48.9 cm |
33歳の時にモディリアーニが描いたこの肖像画のモデルは、エレーナという名前のポーランド人です。
彼女はモンパルナスに集まる知識人の一員で、画家の理解者であり画商でもあったズボロウスキーと同郷でした。
画家独自の単純化された表現は、アーモンド型の目や弓形の上唇などに見られます。
しかし他の作品と違って、この肖像画ではモデルの目が塗りつぶされていません。
その鮮明な瞳と強い視線は、モデルの教養と強い意志を物語っています。