ウフィツィ美術館(Galleria degli Uffizi)は、イタリアのフィレンツェにあるルネサンス絵画で有名な美術館です。この美術館は、1591年より部分的に公開されており、近代式の美術館としてヨーロッパ最古のものの1つであるとされています。
ウフィツィ美術館は、ルネサンス期の絵画に関して世界有数のコレクションを有する美術館で、展示物は2,500点にのぼります。
古代ギリシア、古代ローマ時代の彫刻から、ボッティチェッリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラッファエッロなどイタリア・ルネサンスの巨匠の絵画を中心に、それ以前のゴシック時代、以後のバロック、ロココなどの絵画が系統的に展示されています。
作品名 | 春 |
作者 | サンドロ・ボッティチェリ |
制作年代 | 1482年頃 |
寸法 | 203×314cm |
ルネサンス期のイタリアで最も有名な作品の一つです。
画面中央に立つ女性は美神ヴィーナスで、彼女の周りには愛や花などを象徴する神々や精霊たちが集まっています。
右手前に花束を持って微笑む女性は花神フローラで、彼女の身にまとう花々は200種類以上もあります。
この絵は、メディチ家というフィレンツェの名家の一員であるロレンツィーノが、結婚祝いとして贈ったといわれています。
作品名 | 受胎告知 |
作者 | レオナルド・ダ・ヴィンチ |
制作年代 | 1472年 - 1475年頃 |
寸法 | 98×217cm |
レオナルドが若き日に描いた初期の作品です。
大天使ガブリエルが聖母マリアにキリストの誕生を告げるという場面を描いています。
画面は横長で、二人の間には庭園や山などの風景が広がっています。
これは、レオナルドが自然に対する深い関心を持っていたことを示しています。
また、この風景は、キリストが世界の支配者として生まれることを暗示しているとも解釈できます。
作品名 | 聖母子と二天使 |
作者 | フィリッポ・リッピ |
制作年代 | 1457年頃 |
寸法 | 95×62cm |
フィレンツェで活動した画家でありながら、カルメル会の修道士でもあったリッピが描いたものです。
聖母マリアと幼いキリストが二人の天使に見守られています。
聖母の美しい表情やヴェールの質感などは見事です。
背景には不気味な岩山が描かれており、これは後のレオナルド・ダ・ヴィンチの影響を受けたものと考えられます。
この絵に描かれた聖母子は、リッピが愛した修道女ルクレツィアとその子供フィリッピーノをモデルにしたともいわれています。
作品名 | ヒワの聖母 |
作者 | ラファエロ・サンティ |
制作年代 | 1505年?1506年頃 |
寸法 | 107 × 77cm |
聖母マリアが幼いイエス・キリストと洗礼者ヨハネを抱いている場面を描いています。3人の人物は、ほぼ二等辺三角形を形成するように配置されており、この幾何学的な配置はラファエロの構図の巧みさを示しています。
聖母マリアは赤いドレスに青いマントで描かれていて、赤はキリストの情熱や天の愛を、青は教会や天井の真実を象徴しています。また、洗礼者ヨハネが手に持っているゴシキヒワという鳥は、キリストの磔刑を象徴しています。
背景はラファエロに典型的なもので、自然の風景が描かれていますが、それら全てが中心的な主題を静かに縁取っています。
これらの要素を通じて、ラファエロの芸術性とこの作品が持つ深い意味を感じ取ることができます。
『ヒワの聖母』はラファエロの才能と技術を最大限に発揮した作品であり、その美しさと深遠さを鑑賞することで、観る者に多大な感動を与えてくれます。
作品名 | 聖家族 |
作者 | ミケランジェロ・ブオナローティ |
制作年代 | 1507年頃 |
寸法 | 91 × 80 cm |
この作品は、幼児キリスト、聖母マリア、聖ヨセフの家族と洗礼者ヨハネが前景に描かれ、後景には5人の裸体の男性が描かれています。
画面中央に大きく描かれた、幼児キリストを高くかかげるマリアがもっとも目立つ画面構成になっていて、マリアは地面に直接座り、彼女と大地の間には何も敷かれていない。これはマリアと大地との結びつきをよく伝えています。
マリアの下に描かれている草は緑に塗られ、草が生えていないマリアの周りの地面とは好対照となっています。
ヨセフは家長としてマリアよりも高い位置に描かれています。マリアはヨセフの両足の間に座り、ヨセフがマリアを守っているかのように見えます。
また、画面中央やや下に水平な帯があり、後景に描かれた男性たちと洗礼者ヨハネや聖家族を隔てています。
作品名 | バッカス |
作者 | ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ |
制作年代 | 1596年 |
寸法 | 95 cm × 85 cm |
古代ギリシャのワイン、酩酊、出産、演劇の神であるバッカスを描いています。
バッカスはブドウとブドウの葉を髪につけ、ゆるく身体を覆った衣服の引きひもを指で弄びながら、古代風に身体を傾けています。前の石のテーブルには、果物の籠と赤ワインの大きなデカンタがあります。バッカスは同じワインの浅いゴブレットを差し出し、鑑賞者を自分の方に誘っています。
この作品は、カラヴァッジョが最初の重要な後援者であったデル・モンテ枢機卿の住居、マダーマ宮に入居した直後に描かれたものであり、枢機卿の人文主義的な興味を反映しています。
また、この作品には官能的なエロチシズムが感じられます。少年は若くてハンサムで、身体はふっくらとしていながらも筋肉質です。少年は意味深な目つきで自分に近づくよう鑑賞者を誘惑しており、自分の衣服を身に着けたままにしようとしてはいません。
作品名 | エレオノーラ・ディ・トレドと息子ジョヴァンニ |
作者 | ブロンズィーノ |
制作年代 | 1545年頃 |
寸法 | 115 cm × 96 cm |
メディチ家の栄光を称えるウフィツィ美術館には、トスカーナ大公コジモ1世とその子孫の美術品が展示されています。
その中でも、特に注目すべき一枚の肖像画があります。コジモ1世が宮廷画家ブロンズィーノに依頼した妻と息子の肖像です。このような母と子の肖像は、聖母子像を除けば、ほとんど見られない珍しいものでした。
この絵には、コジモ1世が何か意図を持っていたと言われています。君主は、息子が正当な後継者であることを、この絵で暗に示しています。
共和制から君主制へと移行したフィレンツェで、1537年に17歳で君主になったコジモ1世は、鉄の意志を持ち、生まれつきの君主気質を発揮しました。外交では神聖ローマ帝国やスペインから自立しようとし、国内では自らの神格化を図りました。
フィレンツェ随一の宮廷画家ブロンズィーノが描いたこの名作には、君主の政策に呼応するメッセージが込められています。
真珠で飾られたエレオノーラの美しい姿は、富の象徴でした。
ブロンズィーノは、ドレスの細部を丁寧に描くことでその美しさを際立たせ、無表情な顔つきで、庶民とは違う高貴な公妃のイメージを作り上げました。
写実主義にこだわらないマニエリストとして活躍したブロンズィーノ。この絵は、マニエリスム様式を追求しつつ、それに”洗練≠加えた画家の代表作の一つとして、今もなお語り継がれています。