ピカソ美術館(Musee Picasso)は、フランスの首都パリの3区にある美術館で、パリ国立ピカソ美術館(Musee National Picasso, Paris)とも呼ばれます。この美術館は、その名の通り、画家パブロ・ピカソの作品を収蔵・展示しています。
その収蔵品は、ピカソの遺族が相続税として物納した作品が中心となっており、1973年に死去したピカソが最後まで手元に留めていた貴重なものが多いです。また、彼自身が収集したブラック、セザンヌ、ドガ、マティスなどの作品も所蔵しています。
美術館の建物は、「Hotel Sale(オテル・サレ、塩の館)」と呼ばれるもので、1656年から1659年にかけて建築家ジャン・ド・ブイエによって建設されました1。歴史的な建造物として1964年にパリ市に買収された後、ピカソの作品群を収めた美術館への転用が計画されました。
現在、美術館は絵画、彫刻、デッサン、陶器、版画のほか、直筆の書簡や写真なども収めており、収蔵数は約5,000点に及びます。また、「青の時代」、「バラ色の時代」、「キュビスム」、「新古典主義」、「シュルレアリスム」と年代順に展示されており、ピカソの画風の変化をたどることができます。
作品名 | ドラ・マールの肖像 |
作者 | パブロ・ピカソ |
制作年代 | 1937年 |
寸法 | 92 cm × 65 cm |
パブロ・ピカソの「ドラ・マールの肖像」は、1937年に制作された作品で、モデルはピカソの恋人であったドラ・マールです1。彼女は画家であり、また写真家でもありました。彼女はスペイン内乱に抗議してピカソが描いた「ゲルニカ」の制作過程をカメラに収めたことでも知られています。
この作品は、ピカソがスペイン内乱でのゲルニカへの攻撃に抗議して大作「ゲルニカ」を描いた年に制作されました。また、この時期はピカソが正妻のオルガ、恋人のマリー=テレーズ、そしてドラ・マールとの間で女性問題に悩んだ頃でもあります。
この肖像画では、ドラ・マールの大きくはっきりと見開かれた瞳や挑発的な鼻などが特徴的です。これらはドラ・マールの数多くの肖像に共通する特徴ですが、この作品ではそれらが上品で優しく表現されています。また、赤く塗られた長い爪やはっきりした二重の瞳にはマールの美しさに加え、意志の強さや知性など、マールの内面も捉えて表現されています。
この作品が描かれた1937年は、「泣く女」や「ゲルニカ」など他の作品と比較すると、ドラ・マールの肖像には悲壮感はなく、明るい雰囲気が感じ取られます。これは二人の関係がまだ穏やかな時期だったからでしょう。ピカソが優しい気持ちでモデルに向かい合っていることも伝わってきます。
作品名 | 海辺を走る二人の女 |
作者 | パブロ・ピカソ |
制作年代 | 1922年 |
寸法 | 32.5cm × 41.1cm |
この絵画は、ピカソが新古典主義の時代に描いた作品で、彼独自の自由な表現方法で描かれています。この作品では、二人の女性が海辺を軽やかに疾走している様子が描かれており、そのまま空高く飛翔していくような勢いが感じられます。
また、古代の彫像のような量感ある人物表現が特徴的で、「新古典主義の時代」の作品に分類されます。しかし、左の女性の一番手前にあるはずの腕が最も短く細く描かれていたり、右の女性の目や鼻が消し去られていたりするところに、従来の遠近法や写実主義から解放された自由な表現が見られます。
この絵画は、ピカソとその家族がブルターニュ地方の海辺ディナールで休日を過ごした夏に描かれました。また、この絵画は2年後にバレエ「青列車」の緞帳デザインとなりました。