プーシキン美術館(正式名称:国立A.S.プーシキン造形美術館)は、ロシアのモスクワにある美術館です。この美術館は、13世紀から現代まで各派の西欧絵画を所蔵し、特にフランスを中心とする印象派およびポスト印象派のコレクションは世界的に知られています。
美術館は、モスクワ大学付属美術研究所を核として設立され、1912年にアレクサンドル3世芸術博物館として開設されました。その後、名称はモスクワ美術館を経て、1937年にロシアの国民的詩人アレクサンドル・プーシキンの没後100周年を記念して、プーシキンの名称を冠したものへと変更されました。
プーシキン美術館は、エジプト、メソポタミア、ペルシアの出土品などの考古学資料も豊富に所蔵しています。また、フィンセント・ファン・ゴッホやポール・ゴーギャン、アンリ・マティス、パブロ・ピカソなどの印象派とポスト印象派の作品も展示されています。
作品名 | エステルの饗宴におけるアハシュエロス王とハマン |
作者 | レンブラント・ファン・レイン |
制作年代 | 1660年 |
寸法 | 73 cm × 94 cm |
レンブラント・ファン・レインが1660年に制作した「エステルの饗宴におけるアハシュエロス王とハマン」は、『旧約聖書』「エステル記」に登場するペルシア王アハシュエロス(クセルクセス1世)と宰相ハマンを描いています。
この絵画では、エステルがアハシュエロス王の前でハマンの陰謀を告発し、自らの出身であるユダヤの民を救うよう懇願しています。画面右のエステルは真珠のイヤリングやネックレス、ブレスレットを身に着けているだけでなく、まとったドレスも貴重な宝石をふんだんに飾りつけているかのように輝いています。
その隣に座ったアハシュエロス王はターバンを被り、その上に王冠を戴いています。王はハマンに対する怒りで唇をすぼめ、右手に握りしめた王笏でテーブルを叩いています。画面左、テーブルの反対側に座ったハマンのうなだれたポーズは破滅の感覚を明らかに示しています。
この絵画は、人々の運命、思考と行動、人間の本質、悪の原因、拒絶と孤独、道徳的勇気についての考察を描き出しています。また、「原罪」と「贖い」の象徴であるリンゴとブドウが宴席のテーブルの上に置かれており、丸い皿は運命の女神フォルトゥナが持つ車輪を連想させます。
作品名 | ピエロとアルルカン |
作者 | ポール・セザンヌ |
制作年代 | 1888年 |
寸法 | 102 ×81cm |
この絵画は、16-18世紀イタリアで流行した即興仮面喜劇に登場する道化役のアルルカンと、フランスの無言劇に登場する男役のピエロを描いています。
アルルカンは仮面をつけ、まだらのひし形模様入りのタイツをはき、木剣または魔法の杖を持っています。
一方、ピエロは白塗りの顔、円錐帽をかぶり、白のだぶだぶの衣装をつけています。
セザンヌはこれらのキャラクターを忠実に再現しています。
作品名 | 赤い葡萄畑 |
作者 | フィンセント・ファン・ゴッホ |
制作年代 | 1888年 |
寸法 | 73 × 91 cm |
フィンセント・ファン・ゴッホの「赤い葡萄畑」は、1888年に制作された作品で、生前中に売れた唯一の作品として知られています。この作品は、フランス南部アルルの葡萄畑で夕方に人々が農作業をする様子を描いています。
この絵画では、秋を感じさせる赤と黄色に変化したアルルの葡萄畑が描かれており、太陽の黄色い光が水面に反射し、赤い葡萄畑と調和している様子が巧みに表現されています。
また、同じ頃にゴッホが共同生活を送っていた画家ポール・ゴーギャンも同じ葡萄畑をモチーフにした作品を制作しており、共同制作したと言われています。