ウィーン美術史美術館(Kunsthistorisches Museum)は、オーストリア・ウィーンにある美術館で、美術史博物館とも呼ばれます。
古代から19世紀に至るヨーロッパ各地の美術品を収蔵しており、自然史博物館と対になる施設として建てられ、1891年に開館しました。
現在は組織上ウィーン大学の一部局であり、ルネサンスとバロックを中心とする絵画コレクションはヨーロッパ屈指の質と量を誇り、多数の傑作が所蔵されています。
美術館のコレクションの起源はマクシミリアン1世まで遡ると言われ、以降、歴代君主の収集品が追加され、1659年には世界初の収蔵品の図版入りカタログも製作されました。
特にオーストリア・ハプスブルク家が支配した神聖ローマ帝国と歴史的関係の深かったイタリア、フランドル、ドイツのルネサンス・バロック絵画の収集が傑出しています。
作品名 | 絵画芸術の寓意(画家のアトリエ) |
作者 | ヨハネス・フェルメール |
制作年代 | 1666年 |
寸法 | 130 × 110 cm |
画家のアトリエで起こっている普通の光景に見えるこの光景ー。しかし、この絵は、17世紀オランダの黄金の世紀を代表する画家フェルメールの絵画芸術の粋が込められている。
オランダの古都、デルフトで生まれた画家フェルメールは、謎めいた画家と呼ばれる。
現存する絵は、たった三十数点しかないが、豊かな表現力と鮮やかな筆触で、市民の風俗を描き続け、詩的な作品を残した。
しかし、フェルメール全盛期に描かれたこの『絵画芸術の寓意(画家のアトリエ)』は、風俗画としてだけではなく、歴史画としても見ることができる。
古風な服装をした画家がキャンヴァスに没頭している。
正面には、独立前のネーデルラントの地図が掛かっている。
そして、ラッパと本を持ってポーズを取る女性は、歴史の女神クリオを象徴している。
画家のアトリエは、寓意(物事に別の意味を含ませること)に満ちた歴史画の舞台として演出されているのだ。
昔から、肉体労働を伴う画家の仕事は、陶器や織物製作などの「職人」と同じくらい、音楽家や詩人よりも低く見られてきた。
しかし、15世紀のイタリア・ルネサンス期以降、画家の社会的地位も高まった。
歴史画こそが、芸術家である画家が描くべき最高傑作だと信じたフェルメールは、この絵に自分のすべてを注ぎ込んだ。
15世紀のフランドル(現在のベルギーに相当する地域)絵画が開発した、油彩による細密な描写法。
そして、イタリア・ルネサンスが生み出した遠近法による劇的な絵画表現。
フェルメールはこれらの伝統を、17世紀オランダ絵画の中に、見事に実現させた。
作品名 | バベルの塔 |
作者 | ピーテル・ブリューゲル |
制作年代 | 1563年頃 |
寸法 | 114 × 155 cm |
広大な景色に聳える未完成の塔。
天まで届く塔を建てようとする人間の驕りを、神が罰するという『旧約聖書』の物語に、ピーテル・ブリューゲル(父)は自分の故郷フランドルの風俗を織り込んだ。
資材を運ぶ港は、繁栄するアントワープ港を示唆しているとも言われる。
栄華に浮かれる人々に対する警告を描いたのかもしれない。
作品名 | サムソンとデリラ |
作者 | ヴァン・ダイク |
制作年代 | 1628~30年頃 |
寸法 | 148 × 257 cm |
ルーベンスと同時代に活躍したヴァン・ダイクの、『旧約聖書』をもとにした作品。
イスラエルの英雄サムソンが捕らわれる瞬間が、動きのある構図と鮮やかな色彩で描かれる。
作品名 | 牧場の聖母 |
作者 | ラファエロ・サンツィオ |
制作年代 | 1506年頃 |
寸法 | 113 cm × 88 cm |
『牧場の聖母』は、盛期ルネサンスのイタリアの巨匠ラファエロ・サンツィオが1506年に制作した絵画で、正式な名称は『聖母子と幼児の洗礼者聖ヨハネ』です。この作品は、聖母マリア、幼子イエス・キリスト、そして幼児洗礼者ヨハネを加えた3人の組み合わせを描いています。
この絵画の特徴的な部分は以下の通りです。
ピラミッド型の構図:聖母マリア、幼子イエス・キリスト、そして幼児洗礼者ヨハネがピラミッド型に配置されています。この構図はレオナルド・ダ・ビンチから学んだもので、人物の配置と3人の視線でピラミッド型の構図を作り出しています。
衣装:聖母マリアは赤いドレスに金で縁取られた青いマントを着ています。赤はキリストの情熱、天の愛、犠牲などを象徴し、青は教会や天井の真実などを意味します。
象徴:洗礼者聖ヨハネが手に持っている十字架に触れるためにイエスが左足を前に地面に立っており、その十字架は来たるべき「受難」を暗示しています。
作品名 | ヤコポ・ストラーダの肖像 |
作者 | ティツィアーノ・ヴェチェッリオ |
制作年代 | 1567年 - 68年 |
寸法 | 125 cm × 95 cm |
画家が80歳に近づいた頃に描かれた肖像画です。
かつての鮮やかな色彩は消え去り、 茶色を基調とした地味な色彩で、 モデルの深遷した精神を表現している。
書斎という背景は、 学者を描くときの定番です。
彫像を持つ男性は、 マントヴァ出身の画家であり、 考古学者でもあり、 古美術商でもあった。
作品名 | 青いドレスのマルガリータ王女 |
作者 | ディエゴ・ベラスケス |
制作年代 | 1659年 |
寸法 | 127 cm × 107 cmm |
ディエゴ・ベラスケスの「青いドレスのマルガリータ王女」は、バロック期のスペインの巨匠が1659年に制作した肖像画です。この作品は、当時8歳だったスペイン王フェリペ4世の娘、マルガリータ王女が青いドレスをまとった姿を描いています。
この肖像画は、彼女が3歳、5歳、8歳のときに描かれた3点の肖像画の一部で、これらは彼女の成長記録として、彼女の将来の夫であるオーストリア・ハプスブルク家のレオポルト1世に送られました。これらの肖像画は、「お見合い写真」として送られたもので、遠くから見ると非常に整って見えるように計算されています。
この作品に描かれている8歳の王女は、当時スペイン宮廷でしか見られない流行遅れのファッションである大きく広がった独特の形のスカートを身につけています。衣装の襞、ブロンドの髪や緑のリボン、そして背後のコンソール上の置物や時計は近くで見れば色彩の「染み」にすぎないが、距離をおいて見れば完璧な3次元的空間のイメージが鑑賞者の前に現れます。これは印象主義的とも言える近代的な視覚表現であり、公式の肖像画制作は人間性の洞察と芸術としての画業と完璧なバランスを取っています。