ヴァチカン美術館で見ることができる名画を紹介

ヴァチカン美術館で見ることができる名画を紹介

 

 

バチカン美術館(バチカンびじゅつかん、Musei Vaticani)は、ヴァチカン市国にあり、歴代ローマ教皇の収集品を収蔵展示する世界最大級の美術館です。
サン・ピエトロ大聖堂の北にあるヴァチカン宮殿のほとんどを占めるのが、500年以上の歴史を誇るヴァチカン美術館です。

 

この美術館は、古今東西のさまざまな美術館が集まった複合施設であり、そのためイタリア語ではMuseiと複数形で呼ばれています。

 

正式な名称は「教皇の記念物・博物館・ギャラリー」(伊:Monumenti, Musei e Gallerie Pontificie/英:Pontifical Monuments, Museums and Galleries)です。

 

古代(ギリシャ・ローマ)彫刻、エジプト美術、エトルリア美術、現代キリスト教美術などの分野別の美術館に加えて、ミケランジェロの壁画で有名なシスティーナ礼拝堂やバチカン図書館、中世の教皇庁の建築物(「ボルジャ家の間」、「ニコラウス5世の礼拝堂」、「ラファエロの間」などを含む)も見学できます。
これらすべてを「バチカン美術館」と呼んでいます。

 

ミケランジェロ「最後の審判」

 

作品名 最後の審判
作者 ミケランジェロ・ブオナローティ
制作年代 1536年 - 1541年
寸法 1370 cm × 1200 cm

 

ミケランジェロの「最後の審判」は、ルネサンス期の芸術家ミケランジェロの代表作で、バチカン宮殿のシスティーナ礼拝堂の祭壇に描かれたフレスコ画です。この壁画は、ミケランジェロが66歳のときに1人で完成させたもので、その大きさは13.7 × 12メートルあり、個人の手による絵画作品としては史上最大といわれています。

 

「最後の審判」とは、キリスト教で一番重要だと考えられている教義で、世界の終末に、イエス・キリストが再び現れて、死者をよみがえらせ(この時点で人類は全て死んでいます)、全人類を裁き、天国行きか地獄行きかに振り分けるというものです。

 

この壁画には400名以上の人物が描かれています。中央では再臨したイエス・キリストが死者に裁きを下しており、向かって左側には天国へと昇天していく人々が、右側には地獄へと堕ちていく人々が描写されています。

 

また、特筆すべき点として以下のものがあります。

 

ミケランジェロが描く前から、祭壇画としてペルジーノの《聖母被昇天》が描かれていました。しかし、クレメンス7世は「ペルジーノの絵は全部消して描いて!」と命じたため、ペルジーノの絵は完全に失われてしまいました。

 

聖バルトロマイはキリスト教を信仰して生皮はぎの刑で死んだ聖人です。この絵では彼が自身の生皮を持って描かれており、この生皮はミケランジェロの自画像とされています。

 

当初、ミケランジェロが描いていたバージョンは今よりもっと裸だらけでした。それを儀典長から非難され、「着衣をさせよ」という勧告が出されました。この指示を受けて腰布を加筆したのがミケランジェロの弟子ダニエレ・ダ・ヴォルテッラで、「腰布画家」というあだ名が付けられました。

 

ミケランジェロ「アダムの創造」

 

作品名 アダムの創造
作者 ミケランジェロ・ブオナローティ
制作年代 1508 ー 1512年
寸法 480 cm × 230 cm

 

『アダムの創造』は、ルネサンス盛期の芸術家ミケランジェロが、ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂の天井に描いたフレスコ画の一部です。この作品は1511年ごろに制作され、旧約聖書の『創世記』に記された神が、最初の人類たるアダムに生命を吹き込む場面を表現しています。

 

この絵画は、神とアダムの指先が今にも触れようとしている場面で、人間性を表すもっとも有名なアイコンとなり、多くの模倣やパロディ作品が制作されています。

 

以下に、『アダムの創造』を鑑賞する際に知っておくべき主なポイントを挙げます。

 

神とアダム:神は白い衣服を身にまとう白い髭を生やした老人として描かれ、画面左側下部に描かれたアダムはほぼ裸身となっています。指先からアダムに生命を授けるために神の右腕は伸ばされ、神の似姿で創られたアダムの左腕も同じように伸ばされています。アダムの指先と神の指先は触れ合ってはおらず、生命の与え手たる神がアダムに生命を吹き込もうとする、まさにその瞬間を描いた作品となっています。

 

神の周囲の人物:神の周囲に描かれた人物像が誰か、あるいは何を意味しているのかについては多くの仮説があります。

 

解剖学的学説:『アダムの創造』の極めて独創的な構成に関して、ミケランジェロが十分な解剖学の知識を持っていたのではないかとする説があります。1990年にインディアナ州アンダーソンの医学博士フランク・リン・メッシュバーガーが、医学誌『ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション』で、神の後ろの人物像と、さらにその背景に描かれている布の表現が、解剖学的に正確な人間の脳に見えると指摘しました。

 

ラファエロ『アテナイの学堂』

 

作品名 アテナイの学堂
作者 ラファエロ・サンティ
制作年代 1509年 ー 1510年
寸法 500 cm × 700 cm

 

『アテナイの学堂』は、ルネサンス期のイタリアの画家ラファエロ・サンティのもっとも有名な絵画の一つで、1509年から1510年にかけて制作されました。この作品は、バチカン宮殿の「ラファエロの間」にある4つの部屋のうち、「署名の間」に描かれています。

 

この絵画は、古代ギリシャの哲学者たちが一堂に会する様子を描いています。その中にはプラトンやアリストテレスなど、時代や場所が全く異なる人物も描かれています。これは、この絵が描かれた場所がローマ教皇の学問の部屋であり、人類の知識を表現した名画だからです。

 

特に注目すべきは、画面中央で議論をしながらこちらに歩んでくる2人の大哲学者、プラトン(左)とアリストテレス(右)です。プラトンは天を指差し、アリストテレスは地面に掌を向けています。これは、プラトンの観念論的なイデア論と、アリストテレスの現実的な哲学という対照的な思想を象徴しています。

 

また、ラファエロは登場人物の姿を同時代の芸術家に似せて描いています。例えば、プラトンの姿はレオナルド・ダ・ヴィンチに似せられており、画面右端でこちらに目を向けている人物はラファエロ自身です。